SAP案件(フリーランス)の単価相場と仕事の獲得方法、年収・資格・将来性について解説

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公開日:2023.10.13 / 更新日:

SAP製品は現在、日本のみならず世界中の多くの企業で導入されている業務システムです。そのSAP製品を企業の業務内容に合わせてカスタマイズしたり新機能を実装したりする開発案件を「SAP案件」と言い、担当するIT系コンサルタントを「SAPコンサルタント」と呼びます。

本記事では、このSAP案件について、開発を担当するSAPコンサルタントの仕事内容や魅力、将来性、案件獲得方法などについて詳しく解説いたします。

SAPとは?

最初にSAPとは何かについて説明します。

SAPは企業向けの統合型ソフトウェア(ERP=Enterprise Resource Planning)分野における世界トップクラスのシェアを持つ製品であり、導入企業の多さからグローバルスタンダードの地位を確立しています。

SAPは主にビジネスプロセスを管理し、情報を効率的に管理・分析するために使用され、会計、人事、生産、調達など、さまざまなビジネス領域にわたり企業全体の効率性と透明性を向上させることを目的としたソフトウェアです。

SAPには業務分野別にまとめられた「モジュール」と呼ばれる機能群があり、それらの機能を組み合わせて適切なシステムを構築するとともに、自社の業務に合わせてさまざまな開発・カスタマイズができます。

SAP案件とは?SAPのコンサルティング案件と開発案件の違い

SAP案件には大きく2つの種類があります。

ひとつは、SAPに関して専門的な知識を有し、主にITアドバイザーとしての役割を担う「SAPコンサルタント案件」です。

もうひとつは、SAP導入に向けてその設計から開発・カスタマイズ・テストを行う「SAPエンジニア案件」です。

ただし、SAPコンサルタントであっても、エンジニア系スキルが必要とされることも多く、実務においてはその点を踏まえたキャリア構築やスキルアップが求められます。

SAPコンサルタントの仕事内容

SAPコンサルタントの主な仕事内容は、導入企業がSAPを効果的に活用できるように支援することです。SAPに関する専門知識を駆使し、顧客の業界やニーズに合わせたソリューションを提案する役割を担います。

また、SAP導入プロジェクトの計画、スケジュール、予算管理を行い、開発作業を含めたプロジェクト全体の管理も行います。

SAPコンサルタントの主な業務内容は以下の通りです。
1)要件収集と分析:
顧客のニーズを理解した上で、SAPの導入や改善に必要な要件を収集し、分析を行います。
2)システム提案:
顧客の要件に基づいて、SAPの全体設計及び部分的なカスタマイズを提案します。また、SAPエンジニアと協働でシステム開発時の工程の作成・管理を行います。
3)導入と設定:
SAPの導入フェーズにおいて、業務稼働とシステム動作との間に齟齬がないかを確認し、必要に応じて追加カスタマイズの提案を行います。 
4)トレーニング:
顧客の担当社員にSAPの使い方を教育し、トレーニングを実施します。
5)サポートとトラブルシューティング:
システムの運用中に発生する問題を解決・サポートします。
6)アップグレードと最適化::
定期的に行われるSAPのアップグレードに対応し、業務最適化を支援します。

このように、SAPコンサルタントはSAPの導入から運用サポートまで幅広い業務に対応することが求められ、プロジェクトの内容次第では数年にわたり同じ企業のコンサルティングに携わることもあります。

SAPコンサルタントの将来性

SAPコンサルタントは求められるスキルレベルが高いこともあり、慢性的な人手不足状態が長年続いているのが現状です。これはSAP導入企業の増加に伴いSAPコンサルティング案件も増加していることに加え、2027年問題と呼ばれるSAP特有の事情も影響しています。

2027年問題とは、旧バージョンの「SAP ERP(ECC6.0)」の保守期限が2027年で終了することに起因する新システムへの対応全般について、膨大な人員とリソースが必要となることを指します。旧バージョンのECC6.0と新バージョンのS/4HANAは、同じSAP製品でありながら大きく仕様が異なるため、全くの別製品と捉える担当者もいます。

また、システムの移行においては、要件定義やアセスメント、モジュールの最適化など多くの必要なプロセスがあり、求められるコストやリソースなどについて高度な経営判断が求められます。

SAPコンサルタントは慢性的な人手不足に加え、2027年問題のような要因も加味されるため、対応できるSAPコンサルタント育成講座などが頻繁に開催されています。将来的にもかなりの需要がある職業だと言えるでしょう。

SAPフリーコンサルの単価相場・年収

フリーランスとしてSAPコンサルティング業務を行う人を「SAPフリーコンサル」と呼びます。SAPフリーコンサルとして業務を行う場合、マッチングサービスなどを活用して企業とコンサルティング契約を締結することになります。

SAPフリーコンサル案件の単価相場

SAPフリーコンサル案件の単価相場は100万円〰180万円がボリュームゾーンとなっています。基本的にリモートやフルリモートの案件が多いです。一方で指定先常駐案件は少ないですが、その分やや単価が高い傾向にあります。

SAPフリーコンサル案件は、案件紹介型プラットフォーム等で探すことができます。プラットフォームには案件名や具体的な業務内容、報酬単価などが掲載されていますので、さまざまな案件の概要を把握できるでしょう。

SAPフリーコンサルの年収

IT系コンサルタントの年収の目安は1,200~2,160万円程度です。年収に幅がありますが、案件の単価は稼働率100%で1か月あたり100~180万円程度が相場で、平均すると月収140万円前後になります。

上述したようにSAPコンサルは将来性のあるので、高い年収を得やすい職種といえます。実績の積み重ねが年収アップにつながるので、さまざまな案件を経験しておくことも大事です。

コンサルタントとしてSAP案件を担当するには?

SAPについての専門的なスキルを持っていれば、コンサルタントとしてSAP案件を担当することが可能です。ERPやSAPに関する業務未経験の状態でコンサルタントになるのはかなり困難であるため、まずは以下のスキルや資格を身につけることからはじめましょう。

SAP案件を担当するために必要なスキル・経験

SAPコンサルタントになるためには、以下のようなスキルや知識が必要となります。

1)SAP知識:
SAPの製品やモジュールに関する深い理解が必要です。実務経験などを通してSAPの基本概念、データ構造、ビジネスプロセスについての知識を修得しましょう。
2)業界知識:
特定の業界(例: 製造業、小売業、金融業)向けのモジュール実装などを提案する必要があるため、その業界に関する知識が役立ちます。業界特有の業務フローなどを理解していると提案内容がより具体的になります。
3)テクニカルスキル:
SAPのテクニカルな側面に関する知識が求められます。SAPデータベース、プログラミング言語(ABAPなど)、SAPソリューションのカスタマイズなど、SAPエンジニアと協働する際に的確な指示を出すために必要です。
4)プロジェクト管理:
SAPプロジェクトの多くが大規模で多くのリソースを擁するため、プロジェクト管理が煩雑です。IT分野におけるプロジェクトマネジメント経験とスキルがあり、タスクの計画、実行、監視、報告などを漏れなく実行できることが重要です。
5)コミュニケーションスキル:
クライアントやプロジェクトチームメンバーとのコミュニケーションを円滑に行うことが重要です。要件の理解と説明、トレーニング、ドキュメンテーションなどの場面でコミュニケーションスキルが役立ちます。
6)ソリューションスキル:
SAPコンサルタントはクライアントのビジネス課題を解決することを第一義としています。問題を分析し、適切な解決策を提案・実行する能力が求められます。
7)SAP認定資格:
SAPは公式の認定資格プログラムを提供しており、それらの資格を取得することがSAPコンサルタントとしての証明になります。
8)実務経験:
SAPもしくは他のERPプロジェクトでの実務経験が重要です。未経験の場合、プロジェクトの一部としてモジュールのカスタマイズやトラブルシューティングなど一部の業務を経験し、徐々に幅広い業務に取り組むことがスキルアップとなります。

SAPの独自のプログラミング言語

SAPの開発に用いられるプログラミング言語にABAPがあります。また、S/4HANAになって導入された新しいUIでは、フロントエンドの開発にSAP UI5を用いることもあります。

SAPコンサルタントの場合、これらのプログラミングを直接行うわけではないため、構文ルールやトランザクションコードを覚えておく必要はありません。ですが、同一プロジェクト内におけるSAPエンジニアとの協議においては必ず問われる知識であるため、ベーシックな知識は身につけておくとよいでしょう。

SAP認定資格の取得方法とメリット

SAPコンサルタントの必須資格として、SAPに関する知見・ノウハウを有していると認定する「SAP認定コンサルタント」と呼ばれるSAP社公式認定資格試験があります。

SAP認定コンサルタント資格は全部で140以上ありますが、大きく4つのカテゴリーに分けることができます。
1)SAP Certified Associate (SAP CA):
基本的なSAP知識を持つことを証明するエントリーレベルの資格です。
2)SAP Certified Specialist (SAP CS):
特定のSAPソリューションやモジュールに関する専門知識を証明する資格です。
3)SAP Certified Professional (SAP CP):
全般的かつ高度なSAPスキルを持つことを証明する資格です。
4)SAP Certified Master (SAP CM):
最高レベルのSAPスキルを持つことを証明する資格で、エキスパートとして大企業向けコンサルティングに携わることができます。

SAPの専門知識は非常に需要が高いため、SAP認定コンサルタント資格保有者は転職・求人マーケットで優位に立つことができます。
また、SAPプロジェクトへの参加機会が増える、グローバルな資格として通用するなどのメリットもあります。

SAPフリーコンサル案件を獲得するノウハウ

SAPフリーコンサルタントとして案件を獲得するには、まず情報収集から始めるとよいでしょう。また、SAP案件を問題なく遂行できることを証明するポートフォリオなどを整理しておくことをおすすめします。

案件の情報収集方法

情報収集の第一歩は、SAP案件を数多く紹介しているエージェントに登録することです。エージェントにはSAP案件をはじめとしてさまざまな案件が公開されており、面談やスキルチェック等を踏まえた上で、フリーコンサルタントのスキルに見合った案件を紹介してくれます。

ポートフォリオの充実とプレゼンテーションスキル

自分のスキルにマッチした案件を担当するためには、「自分に何ができるか」をわかりやすくまとめたポートフォリオを作成しておくとよいでしょう。SAP案件は非常に多くの種類があり、業種・業界も多岐にわたります。自分はどこにスペシャリティがあるのかを明確にかつ簡潔に説明できるようなポートフォリオは必須です。

また、SAPコンサルタントはプロジェクトマネージャーとして稼働することも多く、社内外へのプレゼンテーションの機会も多くあります。プレゼンテーションスキルを磨いておくことで、プロジェクトの進行だけでなく、自分自身のスキルアピールにも役立つことになります。

おわりに

SAPコンサルタントは慢性的な人手不足であるうえに、SAP ERP(ECC6.0)の保守終了に伴う2027年問題でニーズが増加しています。基本的にリモートでの対応が多いので、在宅ワークを希望している方にもおすすめです。

Strategy Consultant Bank(SCB)ではSAP案件を多数取り扱っていますので、どのような条件で募集されているかチェックしてみてください。

〜この記事を監修した人〜

石井 学ラーナーズ株式会社代表

2002年、朝日アーサー・アンダーセン(現: PwCコンサルティング合同会社)に新卒入社、大手企業でBPR等、経営コンサルティング業務を経験。 2006年からインターネットベンチャーのドリコムでの勤務を経て、2016年12月にラーナーズ株式会社を設立。 Webサービス(SaaS)を展開しながら複数のコンサルティングも実施。

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